完全に失明しているよりも、少しでも見えている犬の方が幸せ?

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視覚に障害を抱える犬たちは、それぞれ異なる困難を抱えています。

片眼失明、弱視、完全失明など視覚の障害の状況や、視覚を失った経緯によって、不安を感じる理由も難しいことも違います。

片眼の視力を失っている場合 、見えない目側の物の存在に気付かず、人や犬が動いたり、自分が顔の向きを変えたりしたときに、人や犬、その他のものが突然目の前に出現したように感じることがあります。気付かずに他の犬に近づきすぎてしまい、その犬を怖がらせてしまうこともあるでしょう。また、片眼では物体との距離が測りにくくなります。驚いたり、不安に感じて、吠えたり、後ずさりをしたり、うなってしまうというは当然です。

視覚が少しある場合 、物はぼんやりと見えています。私たちは、光の中に浮かぶ黒い陰として映っているかもしれません。その得体の知れないものがどんどん自分に近づいてくる、自分に触る。それはそれは怖いでしょう。例え、それが人や犬だと弁別ができたとしても、その表情やボディランゲージを読み取ることができず、相手の気持ちや目的を推測しづらい状態です。自分の方にやってくる人が、ただ通り過ぎようとしているだけなのか、自分をなでようとしたり、捕まえようとしたりしているか判断がつきません。人や他の犬との正確な距離もつかめず、不安や恐怖を感じるのは当然。自分の身を守るために先手を打つ(吠える、うなる、スナップするなど攻撃的な行動を見せる)ことがあっても不思議はありません。

犬たちは物や状況を把握、判断をする時に、視覚を優先・重視します。すばらしい臭覚は複合的に使うことはあっても、最優先の選択ではありません。それは、視覚が100%の機能を果たしていなくても変わりません。視覚が残っている限り、どんなに見えづらくても、犬たちは目で確認しようとします。他の感覚を目の代わりとして使うことにはなかなか気づいてくれません。

視覚は安全を確認し、安心して活動するための情報を収集するための最重要ツールですから、完全に目が見えなくなるというのは、とても怖く、非常に不便なこと。しかし、プラスな面も持っています。完全に視覚を失った犬たちは、視覚という選択肢自体がなくなるので、必然的に他の感覚を使います。視覚が残っている犬たちよりも、視覚以外の能力を利用することに気付きやすく、また、その能力を飛躍的に向上させていきます。

残された能力を使って、新しい情報を蓄積し、物と視覚的なもの以外の特徴、例えば匂いや音、感触とを関連付けて学習、記憶します。完全に失明した犬たちは、自宅や庭などよくいる、よく行く場所の地図を頭の中に作り(しかも、高低差の情報まで含めた3次元地図!)、それを利用するようになります。音から距離や方向を把握できるようにもなります。他犬や人々の気持ちは、その呼吸から推測するようになります。視覚的な刺激に惑わされることがないので、私たちが不安のない環境を提供することができれば、卓越した集中力を見せてくれます。

生まれつき盲目の場合は、視覚がないことへの不安は少ないでしょう。その体の状態が、その犬にとっては「普通」であり、何かを失っているわけではないからです。しかし、彼ら以外の犬たちは、視覚喪失によって混乱し、ストレスを感じます。それが、事故やSARDs (Sudden Acquired Retinal Degeneration:突発性後天性網膜変性症)などで突然起こったとなれば、なおのことです。強い不安や恐怖から、パニックを起こしたり強いストレス状態に陥っていることもあります。そうした場合は、心身への負担軽減のために薬の助けを借りることも検討すべき。獣医師に相談しましょう。

犬たちは、彼らが持つすばらしい忍耐力と柔軟性によって、新しい体の状態、視覚的な情報のない世界に適応することができます。しかし、それには時間が必要です。私たちがすべきなのは、十分な時間を提供すること。でも、他にもできることがあります。それは、無理強いや罰を使わない報酬ベースのトレーニング方法やゲームを使って、望むものを得る、望むことらするために、残された能力を使うことに気付かせ、その能力と自信を発展させるのを手伝うこと。 報酬ベースのトレーニングは、犬たちの安心できる暮らしの基盤となる飼い主との双方向のコミュニケーションとよりよい関係作りを実現してくれます。

飼い主さんが「かわいそうだ」という気持ちに集中してしまうと、愛犬に何もさせない、飼い主さんがなんでも代わりにやってしまうという状況を作ってしまいます。もちろん、犬の健康と安全を守ることは私たちの最も重要な仕事です。しかし、手を貸し過ぎると、自分自身でできることを増やし、自信と自制心を育むことにつながる重要な学習経験となる、その犬が持っているすばらしい能力を発揮したり、困難を自分自身で解決するチャンスや、新しいことを発見する楽しみを奪うことになります。

ブラインドドッグたちは、視覚を失っていますが好奇心は失っていません。臭覚、聴覚、触覚、記憶力、想像力、創造力というすばらしい能力を持っています!私たちは、個々のブラインドドックが抱える不便さ、難しさ、気持ちと、残されているすばらしい能力を理解することによって、ブラインドドッグの安心と、彼らの生活の質の向上に役立つ、適切かつ最小限の手助けを選択し、提供できます。

以下はブライドドッグの自信と安心を増やすためのトレーニングエクササイズとゲームの例です。


どんなタイプのブラインドドッグにもおすすめ!

これから起きることを伝える予告キュー(Notice Cue)を使う、教える。
教え方、使い方の詳細は無料でダウンロードしていただけるハンドアウトでご紹介しています。

トリック「ハンドターゲット(手に鼻でタッチする)」を教える。(動画内解説英語)
指パッチンの音を利用して教えられます。

KONGを使ったノーズゲーム(鼻を使わせる遊び)(動画内解説英語)

オーボールラトルを使ったレトリーブゲーム

音のシグナルを使う、教える。(動画内解説英語)

以下は、特に触られることが苦手になってしまった犬におすすめのもの。

触られることを、行動を引き出すためのヒントや合図として使ったトリックを教える。
触られた後にいいことがある(ご褒美をもらう)という状況を、トレーニングの中で繰り返し経験することで、触られることがいいことが起きることを知らせる合図と認識され、犬の触られることへの印象がいいものへと変化することを目的としています。

トリック「スピン」(動画内解説英語)

トリック「手を上げる」(動画内解説英語)

触ることを合図にした4つのトリック(動画内解説英語)

自分から人や物に触れにいく行動を強化する。
自らその行動を選択するというのは苦手克服に役立ちます。

トリック「手の上にあごを乗せる」を教える。

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