練習問題を解いて知る「行動の見方と変え方の基本」

応用行動分析学に基づいた行動の見方と変え方の基本について、理解を深めていただけるよう、練習問題を用意しました!ぜひ挑戦してみてください。間違っても、罰を与えたりしませんから!レッツ、お勉強!

【練習問題】

今回の題材にするのは、私が実際に出会った場面です。

経緯:
ヨーキー&飼い主:お散歩中。両者とも強い緊張などは見られない。歩くスピードも合っている。
ヨーキー:立ち止まる。飼い主を見ている。
飼い主:ヨーキーを振り向き「行こうよ」というように、軽くリードを引いてみる。
ヨーキー:動こうとしない。飼い主を見ている。
飼い主:ビニール袋から、ソーセージのようなものを出し、ヨーキーに食べさせる。
ヨーキー:食べたあと、すぐに歩き出す。

環境:
駅前の広場。通勤の人がちらほらいるけれど、ヨーキーのそばを通ったり、近づくような人はいない。犬も周囲にはいない。突然音がしたりはしていない。

【問1】

ヨーキーが、立ち止まり動こうとしなくなった理由はなんでしょう。

【答え】

「甘えているからだ」「甘やかすからだ」と思われた方、結構多いのではないでしょうか。「飼い主を下に見ているからだ」と思われた方もいたかもしれません。「甘える」「甘やかす」「下に見る」というのは、概念であって事象ではありません。概念は、行動の理由にはなりません。

Point!
行動(Behavior)によって得られる結果(Consequence)は、その行動に対するフィードバックであり、それによってその行動の頻度は、増えたり、修正されたり、抑制される。つまり、行動は(過去に得られた)結果によって選択される。これが、オペラント学習(B-C learning, R-S learning)による行動のしくみです。

これに照らして、もう一度考えてみてください。「行動は(過去に得られた)結果によって選択される」のですから…、答えは…、そう。「立ち止まり動かない」ことによって、好ましい結果を得た経験があるからです。

そして、「ソーセージのようなものをもらえた」という今回の経験は、未来の行動選択に影響し、、ヨーキーにとって、よい結果がであったと考えられるので、今後類似する環境に置かれた場合、同様の行動を選択させることになります

Point!
動物の行動を、自分の感情や考え方で意味付けして解釈する、つまり、その動物に「レッテル」を貼ってしまうと、本当に注目すべきことを見過ごし、間違った仮説や方法を選択して、動物に不要な苦痛を与えたり、自分との関係を傷つけることになります。行動とそれが起きている環境(自分自身も含めた、時間的空間的に行動に隣接して存在するすべての物事)を客観的に観察し、ありのまま捉えることが、効果的かつ人道的に行動を教え、変化させるためには必要です。
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「私に(動物に)レッテルを貼らないで!」(Behavior+ Worksの提唱するキャンペーン。コロンバス動物園などの飼育員たちの間で実施されている)

【問2】

では、この「止まって動こうとしない」ということを繰り返させたくないと考えた場合、飼い主はどうすればいいでしょう。

【答え】

他にも方法はありますが、もっとも簡単なのは、「ソーセージのようなもの」を愛犬にあげるために用意してるのであれば、それをあげるタイミングを変えること。散歩中、犬が望ましい行動をしたときに、その報酬として提供します。リードを緩めて近くを歩いているとき、「行こう」と声をかけて歩き出したときに、名前を呼んだり、オイデと言ったときにそばまで来たら、など。「止まって動かない」以外の、行動の価値を高めることによって、「止まって動かない」という選択の価値を低くし、他の行動を選択しやすくし、望ましい行動の頻度を高めていきます。散歩に行くときは、小さなトリーツやフードを何粒か持って、ちぎってあげられるトリーツなら、小さくちぎりながら、「望ましい行動」をした時にあげるようにすれば、散歩は飼い主にとっても犬にとっても、より快適で楽しいものになるでしょう。

おまけPoint!
例えば、散歩中犬に自分の左側の近くを歩いていてほしいならば、犬がその場所、その状態(自分と平行に(同じ方向を見て)立つまたは歩く)でいる状態で、犬が姿勢や位置を調整する必要なく、食べられる場所にトリーツ(おやつ)を持った手を出して、食べさせるようにすると、位置や姿勢も強化されます。行動と結果(トリーツを食べること)の間に時間があっては、関連付けるのが難しくなります。トリーツはバッグの奥の方にいれておくのではなく、ポケットに入れたり、トリーツポーチに入れて、いい行動だなと思って、「おりこう」と声をかけている間に、取り出せるようにしておきましょう。フードやトリーツを持って散歩に行くのは、こんな場面でも役に立つので、おすすめです。

※「強化」とは、成功的な結果を得ることによって、その行動が増え、定着し、より揺るぎないものになっていくこと。

練習問題の事例のように、実際に動かなくなってしまった場合は、まず、犬の視点に立って環境を見渡し、何かに不安や恐怖を感じて動かないならば、まずそこから助けることを優先します。犬や人が近づいてきているならば、彼らが通りすぎるまで、間に入って壁となり、接近させないようにできるでしょう。

不安や恐怖を感じている様子がなければ、自分が変えられる環境を変えてみます。いつでもどこでも変化させられる環境は、自分自身です。視線を外してみる、反対側に動き出してみる、しゃがんでみる、しばらくそのまま待つなど、愛犬が「あれいつもと違うぞ。何だ?」と気を取られ、つい動いてしまうような状況を作ってみます。

そして、愛犬が動き出した瞬間にほめて、持っているトリーツ、この事例でいえば「ソーセージのようなもの」をあげます。ちなみに、トリーツを見せて犬を動かすのはNG。なぜなら、強化したいのは、「自ら歩き出すことを選択すること」であって、食べ物の匂いをかいだり、食べ物を追うことではないからです。

Point!
報酬は、提供する目的や基準、タイミングを明確に理解し、意識することが非常に大切です。行動や学習の理論を理解していても、本に書いてある通りにやってもうまく行動が教えられない場合は、これができていないから。うまくいかないときは、レッスンを受け、指導とアドバイスをもらうことが成功への早道です。自分が気付いていないことに、気付くには他の人の視点が必要です。
Point!
犬がよい選択をしやすい環境を整えて、その選択をしたら報酬を出して評価する。これがトレーニングの基本です。よい選択とは、こちらが理想とする選択ではなく、その時点でその犬が実行可能な、望ましい行動に少しでも近い行動や状態を意味します。理想の行動や状態を求めて、それができないことを罰したり、責めていては、よい行動もよい関係も築いていくことはできません。

いかがでしたでしょうか。両方とも正解できましたか?行動の捉え方や教え方について、誤解をしていませんでしたでしょうか?飼い主の考え方や見方、そして、選択が、犬の行動ばかりではなく、生活の質を大きく左右します。愛犬とのよりよい生活は、正しい知識から!


応用行動分析学(Applied Behavior Analysis(ABA))とは、行動変化と学習についての科学的分析である「行動分析」を、実際の行動問題に応用するための、行動変化の技術とその研究。つまり、行動変化を研修対象にした学問です。

「行動変化の方策は、想像力を生かし、もっとも建設的で、もっとも押し付けがましくなく、かつ、効果的な方法を使うことを約束したものだけに限られる(He Said, She Said, Science Says by S.G.Friedman, Ph.D.より)」

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