境界線トレーニング Boundary Training

境界線トレーニング(boundary training)とは、境界線を決め、「許可なくここから出ないで」もしくは「許可なくここから入らないで」ということを犬に教えるトレーニングです。

こちらの記事で紹介した池田インストラクター(Green Dog)が愛犬零ちゃんに教えている「車から出る時のルール」「玄関から出る時のルール」も、境界線トレーニングです。

犬にとって「飛び出すこと」は当然の選択

犬が飛び出す理由

  • 境界線の向こう側で得られるものがある。
    ex.走ることができる、猫を追いかけられる、匂いをかげる、おいしい食べ物がある、心地いい、退屈をしのげるものがあるなど
  • 境界線の存在を知らない。
    そこが、「境」だと思っているのは人だけです。
  • 境界線を越えるためのルールを知らない。

1つでも当てはまれば、「飛び出す」ことは自然な行動。何も教えていなければ、3つすべてが当てはまります。犬にとって、玄関のドアから飛び出そうとするのは、至極当然の選択だということです。

境界線の向こう側で得られるものが、境界線の手前側では得られないものであれば、「境界線の向こう側」の価値は高くなり、向こう側に行きたいという衝動は強く、抑えがたいものとなります。犬にとっては「境界線を越えること」は非常に魅力的。それをしないという選択を犬にさせるためには、「境界線を越えないこと」の価値を一度それ以上に高める必要があります。同時に、何が境界線なのかを明確にして、それを越えるには許可が必要というルールを犬が理解できるように伝える必要があります。

教え方の基本

犬が自分で考え、「あ、そういうことか!」と気付けるように教えていきます。「境界線」の手前で、自発的にその場に留まることや引き返すこと選択できるよう、習熟度に合わせて環境やクライテリア(報酬が提供される基準)を設定し、成功を重ねながら、目標とする行動を実行できるよう練習していきます。より強い衝動を抑えられるようになれるよう、境界線を越える衝動のきっかけとなる刺激を少しずつ加えて練習を繰り返します。

環境のキュー

境界線トレーニングでは、「境界線」またはその場所、その状況がキュー(合図)として働くよう教えます。「環境のキュー」などと呼んだりします。「境界線」やその場所、その状況が、まず犬にとって弁別(他のものと区別)しやすいかどうか検討しましょう。犬がキューとして弁別し、認識できなければ、キューとして働きません。

2つのトレーニングアプローチ

同じ料理を作るのにも、様々なレシピが存在するように、教え方のアイデアは教え手の数だけ存在しますが、トレーニングアプローチによって2つに分類することができます。

  • A:飛び出す以外の行動を強化する。
    DRO(Differential Reinforcement of Other Behavior)
    どんな姿勢でいるか、その場に留まるか、立ち去るかなどは犬の自由。
  • B:飛び出すこととと両立しない行動を教える。
    DRI(Differential Reinforcement of Incompatible Behavior)
    戻って来る、座って待つ、フセて待つなど、境界線(その場所)まで行ったときにすべき具体的な行動を教えます。

成功と反復の大切さ

自分の選択によって報酬を得る(成功する)経験は、自分で考えて行動することと、自分の衝動を抑え、冷静さを保つことの両方が評価されることになり、犬の自信と自制心の両方を育てます。また、境界線の手前で報酬をくり返し得ることで、境界線を越えないでいることの価値は高まっていきます。何度も何度も繰り返すこと、成功を重ねさせることが大事な理由はそこにあります。

最終的にはトリーツはいらなくなる

その犬が「境界線の向こう側に行きたい」と思っているならば、境界線とそのルールをその犬が理解した後は、トリーツを使う必要はなくなります。許可によって「境界線の向こう側に行く」という望みが叶い、満足感を得るので、「許可を得ること」、「境界線の向こう側に行くこと」が、「許可を待つ」という行動に対する報酬(強化子)になるからです。

愛犬の安全は常に最優先・最大限に

練習方法の参考になる動画をいくつかご紹介しますが、参考にしていただきたのは手順やアプローチの仕方。ノーリードで道路に面した場所での練習風景が出てきますが、囲いなしの場所でノーリードでの練習は、私はおすすめしません!

どんなに練習しても「絶対」はあり得ません。過信しないこと。「このくらいなら…」「今まで大丈夫だったから…」と安全の基準を下げないこと!安全管理は常に最大限・最優先です!ロングリードを使う場合も、危険な場所に届かない長さか、リードの摩耗や損傷はないかを十分に確認してから行ないましょう。

また、ご紹介する動画の中で、トレーナーのEmily Larlhamも言っていますが、境界線トレーニングはフェンスの代わりでは決してありません。境界線トレーニングは、犬の安全をさらに高めるために教えるもの、人が安全管理の手を抜くために教えるためのものではありません!その点をまず正しくご理解いただけますようお願いいたします。


参考動画

Training Self Control at Doorways with One Dog

by Donna Hill (Online Clicker Training For Dogs)

「玄関のドア」が境界線であり、手前に留まることを指示するキュー(合図)になっています。さらに、ドアから出た後に急に走り出したりしないよう、「ドアから出たらこちらを振り返ること」も合わせて教えています。Nice!

‘How to train’ Door Dashing Dogs

by Pamela Johnson (Pam’s Dog Academy)

こちらはBのアプローチで、「両立しない行動」を教えることで、玄関の扉から飛び出さないことを教えています。「人が扉の前に立っている」という状況がキューで、許可がでるまで(解放のキューが言われるまで)オスワリの状態で待つということを教えています。

犬が動いてしまった(間違った行動をした)場合にどう対処するかにも注目しましょう。

Stay: “Prevent Door Dashing” Dog Training

by Pamela Johnson (Pam’s Dog Academy)

徐々に人の動きの刺激をどのように加えていくかがよくわかる動画です。犬が失敗せずに成功を繰り返せるように、犬が釣られにくい人の動作から徐々に犬が釣られてしまいやすい大きな動作にしています。自宅の玄関で起こることが予想される、他の人の出入りという刺激も加えて練習しています。

Dog Training at the Door with Claire & Charlie

by Pawsitive Vybe

こちらもB(両立しない行動を教える)のアプローチ。「飼い主がドアノブに手をかけること」をキューにし、「アイコンタクトをしていること」を求めています。アイコンタクトをしながら、飼い主より先にドアから出るというのは、絶対できないことではありませんが、両立は相当難しいですからね。

Teach “Wait”- Clicker Dog Training

by Emily Larlham (Dogmantics Dog Training)

マッテの教え方ですが、「マッテ」のキューを付ける以外の部分は、そのまま初期の段階の境界線トレーニングに当てはめることができるのでご紹介します。環境、クリッカーを鳴らすタイミング、トリーツの出し方をうまく利用し、「自発的に止まる」という行動をスムーズに引き出しています。クライテリア引き上げもお見事!

No Dogs in the Baby’s Room

by Hannah Branigan (wonderpups)

子供部屋のドアを境界線に。

Invisible Barriers Part 1- Clicker Dog Training Tricks

by Emily Larlham (Dogmantics Dog Training)

Invisible Barriers Part 2- Clicker Dog Training Tricks

by Emily Larlham (Dogmantics Dog Training)


参考記事

How to Clicker Train Your Dog to Stay in the Yard

By Steve Benjamin (Click With Canines)


やってみたけれどうまくいかないという場合は、報酬ベースのトレーニングを教えているトレーナーやインストラクターにやり方を教わりましょう!自己流でどうにかしようとしてしまうと、犬にとってはわかりにくくなるばかり。結果が得られないだけではなく、トレーニングが楽しくないものになってしまいます。

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