建設的アプローチ Constructional Approach

生まれてからこれまで、私たちは行動をし続けていますが、実は行動のことも行動のしくみについてもよくわかっていません。生まれてからずっと動き続けている心臓のしくみについて、教わらなくてはわからないのと同じです。

心臓のしくみについては、義務教育の中でも教えられるので、完璧ではないにしろ、私たちは心臓がどんな機能を持ち、私たちの生き残りにどう役立っているのかを理解しています。しかし、行動については、それがどんな機能を持ち、私たちの生き残りにどう役立っているのかを、大学などで、行動分析という分野を自ら選んで学ばない限り、知らないまま生活しています。

行動のしくみを知らない私たちは、行動の問題に直面したとき、その行動を病気のように考え、扱います。これを病理的(除去的)アプローチ(Pathological Approach)といいます。

苦痛を取り除こうとし、問題に注目し、その兆候を見つけ出そうとし、そして、その兆候に対処しようとするのです。この方法に慣れ、行動のしくみを知らず、他の対処の仕方を知らない私たちは、こうした行動の捉え方、行動への対処の仕方に問題があるということに気づきません。

しかし、病理的(除去的)アプローチ(Pathological Approach)は多くの好ましくない影響を私たちに与えています。

問題に対処するため、行動の前に存在するものだと思っている、気質、性格、考えなどを「問題の兆候」と考え、動物にラベル(レッテル)を貼ります。さらに、実際に起きていることではなく、そのラベルに基いて対処方法を決めます。

問題を除去すること、つまり、レパートリー(その個体が実行可能な行動)を減らすことに注目しているため、苦痛を用いることを考え、懲罰の必要性を擁護し、嫌悪刺激(Aversive Stimulus)を用いることを肯定します。行動の理由は動物の中にあると考えているため、自分自身や環境を変えることに目を向けることも、思いつくこともできません。

ラベルを貼る→ラベルを排除するための方法を選択する→行動が変わらない、もしくは、悪化する→その理由をラベルに基いて考え、その動物のせいにする→より強い嫌悪を用いる(苦痛を与える)ことで、ラベルを排除しようとする→行動が変わらない、もしくは、悪化する…という循環に陥ります。

トレーニングにおいては、Think-Do(思いつきでやる)を繰り返します。Plan(計画すること)が抜けているのですが、それに気づくことはなく、自分の提供しているもの(自分自身の判断、選択、行動、プラン、スキル)を変えようとしません。そのため、例え、正の強化(Positive Reinforcement)を知っていて、それを使っていたとしても、試行錯誤のトレーニング(Trial-and-error training)となり、強化の頻度が低くくなり、行動が単独で起る機会が多くなり(消去 Extinction)、動物が成功する(強化を獲得できる)機会を減らし、動物を混乱させたり、フラストレーションを与えたりすることになります。

オペラント条件づけの4つの箱(Quadrants of Operant Conditioning)を知っていても、行動のしくみを理解していないために、今起きている行動に対してその結果を変えることだけしか考えられず、動物がそのときに経験している苦痛、その動物が成功するための必要な手助けに目を向けることができません。それらを放置(無視)して、自分の選択を押し通します。そして、それがうまくいかないと感じると、環境や自分自身を変えることを考えるのではなく、No Reward Marker(NRM)やその他の嫌悪的な刺激や方法を用いることを考えます。

こうした病理的(除去的)アプローチ(Pathological Approach)に代わる行動問題への対処方法として、Israel Goldiamondが提唱したのが、4つのステップ(ステージ)で構成される建設的アプローチ(Constructional Approach)です。解決方法に注目し、望ましい結果の構築を目指し、目標を立て、そのときに持っている関連のあるレパートリーを利用し、目標へと向かう、線形のアプローチです。

問題に対する解決策は、レパートリーを除去することではない。レパートリーを構築する(または、それらを復元するか新しい状況に移転させる)ことである(Goldiamnod, 1974, p.14)(Cooper, Heron and Heward, 2007 (Nakano))

建設的アプローチの4つのステップ(ステージ)

  1. Outcomes or targets – Where do we want to go? Where do you want to go?
    ゴール(目標とする行動)を明確にする
  2. Current useful (relevant) repertoires – Where are we now? Where are you now?
    目標行動の実現のために利用できる学習者と自分の行動やスキルと、獲得が必要な行動やスキルを理解する
  3. Sequence of change procedures – How will we get there? What steps are going to take you to where you want to go?
    利用できる行動やスキルを目標行動へと発展させるためのステップ、目標行動を実行するために必要な行動やスキルを習得するためのステップを考える
  4. Maintaining consequences – How will we keep ourselves going? What is going to keep you going?
    ステップを進むための強化子(報酬)、目標行動が持続させるための強化子(報酬)を考える

constructional-approach

行動分析に基づく行動介入プログラムでは、新しい行動を教える場合でも、望ましくない行動を改善する場合でも、このように建設的アプローチ(Constructional Approach)に基いて進めていきます。

望ましくない行動を改善する場合は、その代わりとしてその動物が実行することができる行動を考え、目標行動として選定します。そのためには、まず、起きている望ましくない行動と、その行動を生み、維持させている環境を分析して、その動物がなぜその行動を必要としているのか、その動物のニーズを理解します(Functional Assessment)。そして、そのニーズを満たすことができる、望ましい、もしくは、受容可能な行動は何かを考えます、それが目標とする行動です(1)。次に、どう環境を変え、どんな行動やスキルを身につければ、目標行動をその動物が望ましくない行動の代わりに実行できるようになるのかを考えます。その動物がその時点でできる行動や持っているスキルの中で、利用できるものは何か? 習得が必要な行動やスキルは何か?を考えます(2)。そして、どんなステップを経れば、今できることを目標とする行動へと発展させられるか? 獲得が必要な行動やスキルをどういう方法やどんなステップで獲得できるようにするか?を考えます(3)。さらに、その動物とトレーニングプログラムを実施する人が、プログラムを実行し続け、ゴールに向かうステップを上りつづけられるようにするために、どんな強化子(Reinforcer)を用いるか?、目標行動を達成した後に、その動物がその行動をし続けられるようにするために、どんな強化子を用いるか? を考えます。

全体のプランを考えるときだけではなく、各ステップでクライテリアを考えるときにも、セッションを実施するときにも、この4つのステップ(ステージ)で考えることによって、自分が今すべきことがわかり、それに集中することができます。Think-Plan-Do(Bob Bailey)を繰り返し続けることになり、常に、よりよい環境や、自分自身の判断、選択、行動、プラン、スキルについて、考え、見直し、改善し続けることができます。

また、学習者(動物)のレパートリーを増やすことに注目しているため、正の強化(Positive Reinforcement)を用いること、正の強化に基づく対処に集中することができます。試行錯誤のトレーニング(Trial-and-error training)ではなく、「試行成功」のトレーニング(Trial-and-success training)、つまり、無誤学習(エラーを起こすことがほとんどない、もしくは、まったくない学習。Errorless learning)を実現でき、多くの強化の機会を提供し、また、フラストレーションを最小限にすることができます。動物の生活の質を維持または向上させながら、行動改善を実現し、また、新しい行動を教えることができるのです。

建設的アプローチ(Constructional Approach)で行動に取り組むことによって、その動物の気質や性格、考えなどのラベルを動物に貼り、そのラベルを利用して、望ましくない行動やトレーニングが進まないことを動物のせいにしたり、嫌悪刺激を使う方法を用いることを正当化しようとすることもありません。行動を分類しただけなのに、その行動を理解していると勘違いすることもありません。動物が苦痛を経験していることを軽視したり、無視することもありません。環境を変えることと、正の強化に基づくティーチング・スキルによって、建設的な行動支援を続けることができます。

行動分析(行動のしくみと行動変化の科学と技術)と高い倫理基準に基づいた適用方法を正しく理解していれば、動物や行動にラベルを貼る必要も、貼っている暇もありません。建設的アプローチ(Constructional Approach)を実際に使ってトレーニングを実施しているかを確認することで、選択すべきいい指導者かどうかを見分けることができるでしょう。もちろん、自分自身が建設的アプローチ(Constructional Approach)で、行動に対処できるようになれることが重要です!

Reference:

  • Toward a Constructional Approach to Social Problems: Ethical and Constitutional Issues Raised by Applied Behavior Analysis (Israel Goldiamond)
  • The Constructional Approach (Israel Goldiamond, Kimberly James-Kelly)
  • The Teaching the Dog Clicker Way (Jesus Rosales-Ruiz)

Thank you Maasa! Your knowledge, great advice and idea were very helpful for this article!

, , , ,