分化強化(Differential Reinforcement)

報酬ベースのトレーニングでは、望ましい行動を引き出すときやその行動の質を高めるときに、望ましくない行動を改善する場合にも、分化強化(Differential Reinforcement)を用います。

分化強化(Differential Reinforcement)とは、同じ機能を持つ(同じ目的を果たす/同じ結果をもたらす)行動群(反応クラス)のうち、行動の形態や頻度、継続時間などの側面において、あらかじめ決めておいた基準(クライテリア)を満たす行動のみを強化して、それ以外(同じ反応クラスのクライテリアを満たさない行動)への強化を差し控えること。

その結果として、

強化された行動に似た行動はより高頻度で自発され、強化されなかった行動に似た行動は低頻度で自発される(すなわち、消去を受ける)

– Cooper, Heron Heward, & Nakano, 2007

望ましいあるいは受容可能な行動、あるいはそれにより近い行動の強化と、望ましくない行動(繰り返してほしくない行動)の消去を同時に行っていきます。

分化強化には、進行中の活動の長期的中断や正の強化子の条件的除去や、嫌悪刺激の提示は含まれていない。分化強化にはこうした特徴があるため、すべての行動介入の中で最も侵入性の少ない介入になっている。

– Cowndery, Iwata, & Pace, 1990

分化強化(Differenctial Reinforcement)には様々な形態がありますが、動物のトレーニングでよく使われるは次の4つ。

  • シェーピング(漸次的接近反応の分化強化:Differencial Reinforcement of Successive Approximations):
    標的(最終)行動(望ましい行動、起こしたい行動)に、何らかの側面がより近い行動だけを強化し続けることによって、標的行動を起こす。
  • DRO(他行動分化強化:Differential Reinforcement of Other Behaviors):
    あらかじめ決めておいた一定の時間、望ましくない行動が起こらなかったら、強化子を与える。時間を基準に強化子を与えるため、強化を受ける行動は1つとは限らず、望ましくない行動以外の様々な行動が強化を受ける可能性がある。
  • DRA(代替行動分化強化:Differencial Reinforcement of Alternative Behavior):
    望ましくない行動に代わる、望ましいもしくは受容可能な行動を強化する。強化子を与える行動は、望ましくない行動とは両立しないとは言い切れない。
  • DRI(非両立行動分化強化:Differencial Reinforcement of Incompatible Behavior):
    望ましくない行動と同時に実行することができない望ましいもしくは受容可能な行動(両立しない行動)を強化する。

行動改善にもっともよく用いられるのはDRI(両立しない行動の強化)です。

次の動画は、人に対して激しく頭突きをしてくるヤギのメープルへの対処として、人から離れた場所に留まることをクリッカーを使って強化しています。さらに、ターゲットに鼻をつけること、ブロックに前足を乗せておくことをC&T(クリック&トリーツ)で強化。これらも頭突きとは同時に実行できない行動です。

Video by Chirag Patel (UK)

犬にもこれに似た場面でDRIを用います。それは、人への飛びつき。飛びつくことと同時にはできない「座る」、「4つの足を床につけている」といった行動の直後にその犬にとってうれしいこと(トリーツ、なでる etc)を提供し、その行動を維持・増加させます。実際のトレーニングの様子を見ることができる動画をいくつかご紹介します。

Video by Pamela Johnson (US)

Video by Chirag Patel (UK)

Video by Marge Rogers (US)

次の動画では、両立しない行動として、「会った人の手に鼻タッチする」ことを教えています。
Video by Eric Goeblebecker (US)


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References
Cooper, Ehron, Heward, & Nakano (2007). Applied Behavior Analysis

記事内容を更新(2014.11.6)

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