パブロフはいつもあなたの肩に!

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A statue of Ivan Pavlov and one of his dogs
By Илья Го. (грохотайло) (Я автор этой фотографии) [CC-BY-SA-3.0 ],
via Wikimedia Commons

Pavlov is always sitting on your shoulder.
パブロフはいつもあなたの肩に座っている。

by Bob Bailey

パブロフとは、刺激と刺激を関連づけて学習する古典的条件付け(Classical Conditioning, レスポンデント学習)を発見したロシアの生理学者イワン・パブロフ(Ivan Pavlov)のこと。

刺激とは、知覚できる事象のことを指します。古典的条件付け(レスポンデント学習)とは、2つの刺激が、決まった組み合わせ、決まった順序、時間的に近接して、起こることによって、先行する刺激が後に続く刺激(無条件刺激(US)または条件刺激(CS))と同じ意味を持つようになる学習のこと。

犬から見れば、飼い主も知覚できる事象。飼い主の存在そのものも刺激です。もし、あなたがいつも怒鳴ったり、睨みつけるという、犬にとって「嫌な刺激」を与えていれば、その嫌な刺激の前に常に存在しているあなたは、犬にとって「嫌な刺激、避けたいと思う存在」になります。

「でも、うちのコは私のことが好きよ。だって、いつも私を見るとすり寄ってきて、顔をなめるもの。愛情を持って、あのコのために叱っているのを、わかっているんだわ。」という方、いらっしゃるでしょう。

嫌なもの、つまり、嫌悪刺激を避けるための逃避・回避行動は、その刺激から逃げることだけではありません。あなたにすり寄って顔をなめたら、あなたが叱る(大きな声を上げたり、睨みつけたりする)のを止めたという経験をすれば、そこから学習し、あなたが起こす嫌なこと(大きな声を上げたり、睨みつけたりすること)を避けるために、すり寄って顔をなめるようになります(負の強化, Negative Reinforcement)。すり寄り、顔をなめるのは、そばにいたいから、なでてもらいたいからではなく、嫌な思いをするのを回避するためということ。(顔をなめることが、うれしさからの行動ではない場合の例は、この記事でも紹介しています。)

犬の望ましくない行動を見たときに、多くの飼い主がする「叱る」という選択。大きな声をあげる、睨みつける、リードを強く引くといった嫌悪刺激によって、その直前に起きている行動が繰り返されるのを抑制しようという試みです。

行動に続く結果によって、未来の行動の再現性が決まるオペラント条件付け(Operant Conditioning, オペラント学習)の側面においては、行動に続けて嫌悪刺激を提示することによって、その後の行動が抑制される「正の罰(Positive Punishment)」に合致する選択で、科学的であり、目的に適った選択といえるでしょう。しかし、あなたの肩にはパブロフが座っていることを忘れてはいけません。

起きている学習は、オペラント条件付け(反応-刺激学習, 行動-結果学習)だけではないのです。古典的条件付け(刺激-刺激学習)も起きているのです。

他の犬や近くを通るのに反応して吠えてしまう。よくあることですが、これを叱る(吠えたことに対して、大きな声を上げる、睨みつける、リードを強く引くなどの嫌悪刺激を与える)と、古典的条件付けという側面ではどんな学習が起こるでしょう?

大きな声を上げたり、睨みつけるという嫌なことが起きる時、起きる直前に、犬が知覚している事象は何でしょう? その場所やあなたを含めた周囲に存在するものすべてが刺激です。そのすべてが与えられる嫌なこと(嫌悪刺激)と結びつけて学習される可能性がある刺激、つまり、避けたいと思う嫌な存在へと変化する可能性があるのです。

そこが、いつも痛いことや嫌なことをされると犬が感じている動物病院だったら、ますます嫌な場所になるでしょう。他の犬を見ていれば、他の犬のことがますます嫌な存在になるでしょう。

望ましくない行動を罰するというのは、叱らないのはダメな親、叱らないとわがままになるといった社会通念とも相まって、必要な選択と考えられがちです。

しかし、実際には、その叱る、罰を与える(大きな声を上げたり、睨みつけたり、リードを強く引くといった)選択によって、生活の中に犬が恐怖を感じたり、避けたいと思うを嫌なものを増やし、また、その感情を増させ、望ましくない行動を起こすきっかけを増やしてしまうことになります。望ましくない行動が起こり、繰り返される原因を作り、おまけに、自分自身も愛犬が嫌だなと感じる存在にしてしまうのです。

いい飼い主は、犬の望ましくない行動を叱る飼い主ではく、望ましくない行動を未然に防ぐ飼い主です。

エンリッチメントを含む生活全体とその時の状況に合わせたマネージメント、そして、人との暮らしの中で必要とされるスキル(多くの望ましい行動)を犬に教えることによって、望ましくない行動を未然に防ぐことができます。

犬が自ら選択した行動に対して、その犬にとってよい結果を提供する「正の強化(Positive Reinforcement)」に基づくテクニックで、望ましい行動を教えることができます。

正の強化で教えることによって、あなたが得られるのは、愛犬の望ましい行動だけではありません。

思い出してください。あなたの肩には…、そう、パブロフがいるのです。いつも自分にとって好ましいものや状況を提供してくれるあなたは、その存在そのものが、愛犬にとってより好ましく、より価値のあるものになっていきます。

信頼や安心感は、その刺激によって自分が傷つけられることはなだろうという予測(Dr. Susan Friedman)。強化の歴史(History of reinforcement)を重ねることによって、愛犬を安心させられる存在となり、よりよい関係を愛犬と築くことができます。また、生活の中の様々なものを愛犬にとって「いいもの」にしていくことができ、愛犬が恐怖や嫌だと感じる機会を減らし、ワクワクさせる機会を増やすことができるのです。

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