「犬の社会化」を正しく理解できていますか? (1)

1

社会化という言葉を、本当によく耳にするようになりました。

社会化は、犬が人の社会の中でより快適に生活するためにとても重要な手続きですが、間違った解釈や方法は、逆に犬に不利益を与え、苦しめることになります。

残念ながら、間違った情報は犬に関わるプロを名乗る人たちからも発信されています。「社会化のトレーニング」や「社会化をする」と言った言葉で、「社会化」が懲罰式のトレーニングに代わる方法であるかのように語られていたり、犬がすでに恐怖を感じている刺激に対する反応(行動)を変えるための方法として、薦められたり、紹介されていたりします。

プロを名乗る人がそう言っていれば、飼い主の方々は当然それを信じ、それが間違った情報・方法であるということがわからないまま続けてしまいます。そして、親切のつもりで友人に、SNSで、ブログで発信。そうして、誤った情報は拡散されていきます。

社会化という言葉を使われている方、その言葉の意味を正しく理解しているでしょうか。犬の生活向上に役立つ正しい方法で、社会化を行っているでしょうか。確認してみましょう!

「社会化」のように実態のないものを示す言葉は、まずその定義を明確にする必要があります。犬の社会化の意味とその重要性について、その根拠から見ていきましょう。

犬の社会化期

社会化期と、その期間に人と関わりを持たせること(社会化)の重要性の根拠となっているのが、Freedman, King, & Eliot (1961)の「The “Wild Dog” Experiment」と呼ばれる研究です。多くの子犬たちを母犬とともに、屋外の広い敷地の中で、観察者(人)と関わりが生まれないように管理、飼養。子犬たちをグループに分け、それぞれ2週齢、3週齢、5週齢、7週齢、9週齢で、敷地から連れ出し、1週間毎日観察者(人)と関わりをもたせました。また、14週齢までそのプログラムを実施しないグループも作られました。そして、それぞれのグループを、それまで経験したことのない未知の社会的刺激に、同じ条件で触れさせ、彼らの反応(行動)の観察する複数の実験が行われました。

その中の一つが、「Passive Handler Test」。受動的な(積極的な関わりを持つことのない)観察者(初めて見る人)がいる部屋に、毎日10分間置き、子犬の行動を観察する実験です。この実験で、3週齢の子犬たちは、すぐに観察者の所へ行きましたが、7週齢の子犬たちは、(観察者に)積極的な社会的関わりを持とうとするまでに平均で2日間かかり、14週齢の子犬たちは、非常に怖がり、1週間経過しても決して近づくことはありませんでした。

他にも、リードをつけて移動する、報酬として食べ物を人の手から食べさせるなどの実験を行った結果、14週齢の子犬たち(14週齢まで人と関わる機会を与えられなかった子犬のグループ)が、もっとも恐怖や回避の反応を示したことで、おおよそ12〜14週齢の間に(新しい刺激を受け入れられる)社会化期の終わりが存在すると結論。づけています。また、この時期に子犬が場所に対して強い愛着を持つようになることから、子犬がこの週齢で、自分が置かれている環境の中に存在する、命あるものと命のないものの両方に愛着を持つようになると考えられています。

目や耳が機能しはじめ、周囲を認識することができるようになり、環境や同胎の動物と関わりを持ち始める生後3週から、Freedmanらの実験によって新奇の刺激に対して強い恐怖を示すようになる12〜14週(3ヶ月)までが、犬の社会化期とされ、この期間が、少量の経験がのちの行動に大きな効果をもたらす時、動物の生涯の中でもっとも重要な、生涯における特別な時間を意味するクリティカル・ピリオド(臨界期)だと考えられています。(Scott & Fuller, 1965)

犬の発達の自然周期 – J.P. Scott (1963)

  • 新生児期(誕生〜):新生児栄養摂取
  • 移行期(目が開く(生後2週間)〜 ):成犬の感覚的、運動的、心的能力への移行
  • 社会化期(急速、固定的な条件付け、音への驚愕反応、尻尾を振る(生後3週間)〜):最初の社会的関係の形成、母犬からの部分的独立、同胎の子犬への反応の増大
  • 少年期(距離のある探索(生後12週間)〜):急速な成長、運動的スキルの発達、母親からの独立の増加
子犬たちは、見ることや聞くことができ、十分に動き回れるようになると、環境や同胎の子犬たちとの関わりをさらに持ち始めます。他の動物や個体と絆を結ぶための準備の時です。物や人、環境が安全であることや他の犬の身振り(ボディランゲージ)を学びます。社会を学ぶ感受期です。おおよそ生後3週間から3ヶ月までで、犬の生涯においてもっとも重要な社会化期です。この期間に適切な社会化を獲得できなかった子犬たちは、見たことのない人、犬、音や物、環境を怖がる傾向があります。

– Dr. Sophia Yin, DVM, MS (2011)

生後3ヶ月までが、子犬の社会化のための最初のもっとも重要な時間です。この間に、子犬を、安全に、かつ、過度の不安や離脱行動、回避行動として現れる刺激過剰を生じさせることないように、新しい人、動物、刺激、環境に最大限接触させるべきです。
なぜならば、生まれてから最初の3ヶ月間は、社交性が恐怖を上回っている時だからです。子犬が新しい人や動物、経験に順応する最初のチャンスです。この重要な期間の不完全な社会化、不適切な社会化は、そののちの生活において、恐怖や回避、攻撃性を伴う行動的な問題の危険性を増大させる可能性があります。

– American Veterinary Society of Animal Behavior

社会化は、社会の一部であることを知ることを意味する。ペットの子犬を社会化することについて話す場合は、彼ら(子犬たち)が、様々な人、環境、建物、景色、音、匂い、他の動物、他の犬たちが存在する人間の社会の中で、ペットとして、快適に過ごせるように手伝うことを意味する

– ASPCA

社会化は、刺激にただ暴露することではない

クリティカル・ピリオド(臨界期)は、社会化のチャンス – 子犬たちが、何が安全でいいもので、何がそうでないものなのかを学ぶ時。

– Pat Miller (2012)

「犬を社会化する」とは、新しい刺激とともにプラスの(ポジティブな)経験をさせ、その刺激をその犬にとっていいものにすること。

社会化期は、自分が生きる世界に存在する「味方」なのか、自分の生きる世界以外の自分に危険を及ぼす可能性のある「敵」なのかが分類される期間。その間に出会わなかった刺激だけではなく、その間に危険と感じた刺激も「敵」に分類されてしまいます。

社会化期の間に、その犬がこれから出会い、触れ、関わる可能性のある、その犬が暮らす社会の中にある刺激(人や動物、もの。そして、その動き、音、匂い、感触、場所、空間など)に可能な限り数多く、その刺激がその犬にとっていい印象が残るように出会わせ、経験させることが重要です。

刺激にただ触れさればいいというものでは決してありません。

触れさせる新奇の刺激をいいもの、いい印象を残すものにするために利用するのは、刺激と刺激を関連付けて学習する古典的条件付け(レスポンデント条件付け)です。新しい刺激とその犬にとっていいこと・快に感じることを組み合わせて提供します。

こちらは、社会化期にどんな刺激に、どんなふうにして触れさせるといいかを紹介したポスター。

ポスター 犬を社会化する(DoggieDrawings.net)

by Sara Reusche, CPDT-KA, CV (Paws Abilities) and Lili Chin (Doggie Drawings) 日本語訳: Miki Saito, CPDT-KA

知らない人が、犬が自ら近づくのを待っていてくれて、近づいてみたら美味しいトリーツをくれた。気持ちいいところを撫でてくれた。おもちゃを動かして遊んでくれた。初めて見るクレートの中におやつがおいてあった。まだ身につけたことのないハーネスの匂いを嗅いだら、トリーツをもらえた。etc.

刺激に触れさせるときは、それに近づくか、離れるかをその犬が決められる環境と時間を提供します。無理強いは、百害あって一利なし。厳禁です。リードをつけている場合は、緩んだ状態を保ち、犬が刺激から離れようとしていたら、それを止めず、それに続いて移動します。ロングリードを使ってもいいでしょう。


「犬の社会化」を正しく理解できていますか? (2)に続く


,