「犬の社会化」を正しく理解できていますか? (2)


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いい社会化とは?

社会化が、ポジティブな(プラスの)結果になるのは、その社会化経験がポジティブな(プラスの)ものであるときのみである。
子犬を社会化するためには、新しい刺激を紹介するときのポジティブな経験と、ネガティブな経験の回避が必要である。

– Dr. Emily Levine DVM DACVB (2014)

刺激を紹介するだけではなく、それを不快なものとして学習させないようにするのが、社会化です。

刺激に対する印象は、それに続いて起こる出来事(刺激)によって決まります。他の犬と会った時に、驚いたり、恐怖を感じれば、他の犬は怖いものになる。危険なもの、「敵」として分類されてしまいます。他の人も同じ。もし、抱っこされていたり、リードにつながれていて逃げられないときに、怖いと感じていることを無視して人が近づいてきたり、触ってきたりすれば、当然、他の人は恐怖を感じる存在に。危険なもの、「敵」として分類されてしまいます。

いい社会化の様子をいくつかご紹介しましょう。

by Nando Brown IMDT, CTDI, CAP2, PPG, FSG1

by Emily Larlham

by Marge Rogers, CPDT-KA

どうでしょう? 子犬の様子はいかがでしたか? 社会化は、何かの行動を教えることではなく、いい印象が残るように刺激に触れさせること。子犬が、新奇の刺激を知覚していても、過度に興奮することも不安になることもなく、楽しそうに、もしくは、くつろいでいられていれば、社会化は成功です。

これが、私たちが「社会化」ですべき仕事。犬を社会化する方法です。社会化とは、子犬が新しい刺激(人、犬、物、場所、音etc.)と、楽しく快適な経験ができる環境と時間を作ること。新しい刺激がその犬にとっていいものになるよう手伝うことです。刺激への接触を無理強いしたり、恐怖を感じる状況に犬を置くことは、決してプラスの(ポジティブ な)経験にはなりません。

正しい知識と技術を持った信頼できるトレーナー/インストラクターに手伝ってもらう、もしくは、配慮の行き届いたいいパピークラスに参加すれば、あなたの犬のために、触れさせる刺激を選定、調整して、あなたの犬がいい経験ができる最適な社会化の環境の整えてくれるでしょう。犬のボディランゲージと行動を細かく観察して、適切なタイミングで、必要な判断や対処をアドバイスしてくれるでしょう。環境や刺激を一頭一頭に合わせて調整しない(すべての犬に対して同じやり方をする)、犬のボディランゲージや行動を注意深く観察していない、犬同士を遊ばせっぱなしにするトレーナー/インストラクター、パピークラスはNGです。

犬にその刺激を怖いと感じさせたら、その時点で社会化は失敗

社会的関係の決定に加えて、子犬の感情繊細さ、未発達の運動能力と知的能力は、永続的な心理的ダメージのクリティカル・ピリオド(臨界期)でもある可能性を示唆している。

– John Paul Scott, & John L.Fuller (1965)

犬の不安や恐怖、ストレスにいち早く気づけるように、犬のボディランゲージと行動をよく観察します。この動画の中で出てくるような小さなストレス・サイン(ストレス・シグナル)に気づき、見逃さないようにしましょう。

by Joan Orr

体を固くしている、地面の匂いを嗅ぐ、体を掻く、あくびをする、顔や体を刺激から背ける、自分の鼻や唇を舐めるように舌をぺろっと出すといったボディランゲージと行動は、犬の不安やストレスの現れ。その環境(刺激、状況)がその犬にとって、不快であることを示しています。たまに極短く見せるくらいであれば、そのまま注意深く観察を続けて構いませんが、連続して見せるようであれば、その刺激や状況がその犬が対処しきれない、その犬にとって負担が大きすぎる可能性があるので、その刺激(状況)から離脱させます。

しばらく時間をあけてから、または、日を改めて、その刺激に触れる機会を設けるといいでしょう。その場合は、その刺激の度合いを弱める工夫をします(さらに距離をおく、音や動きを小さくする、その刺激を感じる時間(刺激と接触する時間)を短くするなど)。その環境で、その犬がリラックスしていられたら、刺激の度合いを徐々に強めていきます。刺激を弱める工夫をしても、リラックスしていることができない、興奮しすぎてしまう、ストレス・サインを繰り返し出すようであれば、その犬が必要なのは、「新奇の刺激に触れさせる社会化」ではなく、「その刺激との関係を再構築し、セルフコントロールや自信を向上させ、望ましい行動を教えるトレーニング」です。飼い主の判断や対処の仕方、犬に対する関わり方やハンドリング・スキル、生活環境全体の見直しが必要になる場合もあります。トレーナー/インストラクターの助けが必要だと考えましょう。

犬同士を関わらせる場合は、自分の犬が他の犬を怖いと感じてしまう可能性があるだけではなく、自分の犬が相手の犬に怖いと感じさせてしまう可能性があることを忘れてはいけません。自分の犬と関わっている犬の双方の犬のボディランゲージと行動を注意深く観察しましょう。自分の犬が興奮しすぎている場合や一方的な場合、関わっている犬がストレス・サインを連続して出している場合、人の背後や椅子の下に隠れようとしている場合、耳を後ろに倒し、尾を足の間に入れている場合、迷わず間に割って入り、自分の犬をその犬から離しましょう。抱き上げてもいいですし、リードをつけて、トリーツを見せその場から離れるように促してもいいでしょう。

離れた場所から、他の犬を見ているのも社会化です。落ち着いて見ていられたら、トリーツをどうぞたくさんあげてください。そうすれば、他の犬に対する印象をいいものにするだけではなく、他の犬が見えいても落ち着いていることを強化する(教える)ことにもなります。

他の犬との関わり方において目指すべきは、他の犬を見ても過度に興奮したり、過度に不安になったりせず、飼い主のサポートとある程度の距離があれば、他の犬がいても落ち着いていられるようになることです。

社会化は、望ましくない行動を予防するためのものであって、治療するためのものではない

社会化は、すでに存在している行動の問題のための治療方法ではない。
あなたのすでに恐怖や攻撃的な行動を示している子犬や若い犬を、その犬が怖いと感じている状況に、連れて行ったり、置くのは、「フラッディング(洪水療法)」と言われるものである。危険性の高いテクニックであり、その犬をさらに不安にさせたり、さらに攻撃的にする可能性がある。

– Dr. Emily Levine DVM DACVB (2014)

動物がその場から離れられない状態で、その動物が恐怖を感じていることを無視して、恐怖を感じている刺激に触れさせ続けるのは、フラッディングです。強い反応(攻撃的な行動や嫌悪の増大)を引き出す可能性があり、その動物を強い嫌悪状態にし続けるので、倫理的でもありません。もちろん、それは「社会化」ではありません。

行動変化の科学についての、正しい知識と技術と高い倫理基準を持っているトレーナー/インストラクターであれば、その犬が怖いと感じる刺激への印象(学習)を改善する場合、フラッディングではなく、CC(Conterconditioning:拮抗条件付け、逆条件付け)&DS((Systematic) Desensitization:系統的脱感作)の手法、または、それを応用した方法を用います。

社会化期の子犬であっても、成犬であっても、他の犬に対して回避行動(逃げる、隠れるだけではなく、吠える、飛びかかろうとすることもその刺激を回避するための行動)を示している場合、その犬と周囲の心身の安全を最優先に考えているトレーナー/インストラクターであれば、プライベートレッスンから始めることを薦めるはずです。例え、飼い主がグループレッスンを希望していたとしても。なぜなら、犬をその犬が危険だと感じる状態におくことは、その犬にとって大きな苦痛であり負担であるばかりではなく、恐怖によって攻撃的な行動を選択させる可能性を作り、近くにいる犬や人に身体的な危険が及ぶ可能性があるからです。

社会化は、特定の行動を変えたり、教えたりするプログラムではありません。

すでに望ましくない行動(刺激への反応)が起きてしまっている場合には、行動と環境を観察、分析して、その行動が持っている機能(その犬が必要としていること)を理解した上で、望ましくない行動の代わりに実行してもらう行動と、その犬が新しい行動を実行するために必要となるスキルと環境を特定してから、マネージメントとトレーニングを計画・実施します。その中には飼い主の生活や行動の改善やスキルの習得も含まれます。(行動変化の科学(行動分析)の知識と技術、高い倫理基準を持つドッグトレーナーが使う行動改善(行動介入)のプランニング方法とテクニック、その科学的倫理的背景については、The Smart Dog Owner AcademyのLecture 7でお伝えしています。ご興味がある方は、ご参加ください。)

社会化は、新しい刺激を紹介するときの手続き

14週齢で社会化をやめない。人々や犬、音などがいいものであり、安全であることを強化し続けることが重要。

– Dr. Emily Levine DVM DACVB (2014)

社会化は、その犬に新奇の刺激を紹介するときに、環境を整え、その刺激とともにプラスの(ポジティブな)経験させ、その刺激がその犬にとっていいものになるように手伝うこと。その犬の暮らしを快適なものし、望ましくない行動を未然に防ぐことを目的とした、新しい刺激を犬に紹介するときの手続きです。

新しい刺激に触れるのは、社会化期だけではありません。犬は、社会化期を過ぎたあとでも、生涯にわたって新しい刺激に触れる機会があります。はじめて出会う刺激を怖いと感じるものにしないために、この手続きを実践することが重要なため、社会化期をすぎた子犬や成犬に対しても「社会化」という言葉を使うことがあります。「社会化」は、新奇の刺激を怖いと感じるものにしないための「予防」、怖いと感じることによって起こる望ましくない行動の「予防」

もし、「その犬がすでに恐怖や攻撃、回避の反応を示している刺激(経験と学習がすでに起きている刺激)」に対して、また、それによって起きている行動を改善することを意味して「社会化」という言葉が使われるとすれば、それは「社会化」の誤解釈・誤用です。社会化期と行動変化の科学についての、正しい知識と技術を持ったトレーナー/インストラクターであれば、恐怖や攻撃、回避の反応をすでに示している犬に対して「社会化」や「再社会化」「社会化のやり直し」と称したトレーニングを提案することはありません。

社会化は、犬の攻撃性や不安障害を抱える犬のための治療方法ではない。

– Dr. Emily Levine DVM DACVB (2014)

社会化は、犬が反応してしまう刺激を減らすことを意味するものでも、起きている行動を変えるための手段でもありません。


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