感じ方や捉え方が違うことを知る

犬にわかりやすく伝える、犬が理解できるように教えるためには、同じ空間にいても、同じ景色や物を見ていても、自分と愛犬とでは感じ方や捉え方が違うことを理解することが、非常に大切です。

テンプル・グランディン氏は、幼少期に自閉症と診断されながらも、家畜施設の設計において能力を発揮し、現在コロラド州立大学の準教授として活躍しています。動物の感覚と自分の感覚が近いことに気付いた彼女は、それを生かし、普通の人では気付きにくい、動物の不安や混乱の原因となるものを見つけ出し、非虐待的な家畜施設や設備を実現しています。

こちらは、twitterでもご紹介したテンプル・クランディン氏のTEDのスピーチ。動物たちのことを正しく理解するのに役立つことが多く語られています。(日本語字幕つき)

自閉症や動物を理解するためには言語から離れること。言葉ではなく絵で考えている。
動物は知覚で考える生き物です。言語ではありません。絵で考え、音で考え、においで考えます。
動物や(自閉症である)私の脳は知覚で得た情報をカテゴリーに分別します。馬に乗っている人、地面に立っている人、これらは全く別のものとして認識されます。

Dr. Temple Grandin

例えば、言葉のキュー(合図)。飼い主は、自分の言葉が犬の行動の合図になっていると思っていても、実際には、飼い主の姿勢や体の動き、場所や状況を、犬は合図として考えている場合が非常に多くあります。

愛犬の後ろに立って、言葉のキューを言ってみてください。愛犬はあなたが正面にいるときと同じ反応をしますか?

しなければ、あなたの愛犬にとって、その行動の合図は「言葉のキュー」ではなく、あなたの体の動きや立つ位置、周囲の状況や環境であるということ。食事のときに「マテ」で待たせてから食べさせているのに、目の前に食べ物がなかったり、他の場面では「マテ」でじっとしていることができないというのは、まさにこの典型。

犬が悪いわけではもちろんありません。あなたの発する言葉(音)が、その行動を求める合図であると犬に伝わっていないのです。つまり、犬が理解できるように教えられていないということ。

犬に「言葉のキュー」が、その行動をしてほしいという合図だと伝えたいのであれば、まず、あなたの姿勢を変えて練習します(立って指示しているのであれば、前屈みにならずに体を一切動かさないでキューを言う。できたら、トリーツ一粒。視線を外して…、立つ位置を変えて…、イスに座って…、床に座って…、寝転がって…)。環境も合図として、または合図の一部として認識している可能性が高いので、次は環境を変えて練習します。(リビングルームでできるのならば、他の部屋で…、廊下で…、他の人や犬が来ない外で…)こうして、様々な環境や状況の中で繰り返すことで、犬は共通しているものがあなたの発する言葉(言葉のキュー)であることに気付き、それが行動の合図であると認識することができます。

リビングの壁紙が変わることも、庭に木が植えられることも、動物たちにとっては大きな変化

Ken Ramirez

「言葉ではなく絵で考えている」とテンプル・グランディン氏はスピーチの冒頭で語っています。愛犬の視点から、「絵」として状況を捉えてみましょう。愛犬の学習や集中を妨げる刺激はないでしょうか。あなたにとっては、小さな刺激や変化であっても、犬にとっては大きな刺激で、気持ちがそちらにそれたり、合図がわかりづらくなったりしているかもしれません。

もう1つ忘れてはいけないこと。人にとっては意味を持つ「言葉」であっても、犬にとってはただの「音」であるということ。「オスワリ」と「スワレ」は人にとっては同じ意味でも、犬にとっては何のつながりもない別の音。行動に対する合図の言葉は1つに。言い方も一定である方が犬にとってはわかりやすいということです。「オスワリは?オスワリよ、オスワリ。オスワリ!オスワリして!」なんていう、説得や連呼も犬にとってはわかりにくいもの。また、普段の会話には出てこない言葉の方が、犬に親切なキューになるでしょう。

目や鼻、耳などの感覚器官の能力や使い方が大きく異なる人と犬では、同じ空間にいても、同じものを見ても、注目するものも、感じている世界も違っていて当然。犬と同じ世界を感じることはできなくても、犬は自分とは違う感覚で状況や刺激、環境を捉えているということを知っていれば、うまくいかないときや困った行動が起きた時に、犬を叱ったり、犬の気持ちや行動の理由を自分の視点から決めつける前に、わかりやすく伝えられていないのかもしれない、愛犬にとっては困難な状況なのかもしれない、他に自分にできることが何かあるのではないかと考えることができるでしょう。

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