イアン・ダンバー博士の「犬の噛みつきスケール」(APDT配布資料日本語訳)

元の資料:Dr. Ian Dunbar’s Dog Bite Scale (Official Authorized Version)
配布元:APDT (Association of Pet Dog Trainers)


創傷状態の客観的な評価に基づく「噛みつき問題」の深刻さの判断

baitscale
レベル1

乱暴もしくは攻撃的な行動であるが、皮膚に犬の歯は接触していない。

レベル2

皮膚に歯は接触しているが穴は空いていない。皮膚に対して、歯が垂直方向ではなく、前方または水平方向に動いてできた切り傷(0.25mm未満の深さ)と出血を伴う可能性がある。

レベル3

1回の噛みつきにより、皮膚に1〜4つの穴があく。いずれの穴もその犬の犬歯の半分以上の深さはない。被害者が手をひっこめたり、犬の飼い主が犬を引き離そうとしたり、重力(小さな犬が飛びついて噛みつき、床に落ちるような場合)によって、一方向の裂傷を伴う可能性がある。

レベル4

1回の噛みつきにより、皮膚に1〜4つの穴があく。その犬の犬歯の半分以上の深さの穴が1つ以上ある。犬が数秒間噛みついたままになり圧迫があった場合は、裂傷の周囲に深い変色(打撲)が残る。また、犬が噛みついたまま頭を左右に振った場合は、2方向性の裂傷になる。

レベル5

レベル4の噛みつきを2回以上の伴う連続した噛みつき。または、レベル4の噛みつきを毎回1回以上伴う連続攻撃。

レベル6

被害者が死亡する。

前述のリストは今後が懸念される好ましくない行動である。次に判断を加える:

レベル1レベル2で、犬の事故の99%を遥かに超す。その犬はまったく危険ではない。恐がり、もしくは、エネルギーが有り余り抑制が利かない、自制心がないといった場合が多い。

よくなる可能性は高い。基本的なトレーニング(コントロール)で、問題はすぐに解決する。特に、好ましいこととの古典的条件付けをたくさん行い、リトリート&トリートの大量反復と、「オイデ→オスワリ→食べ物の報酬→人が後ろに下がる→犬の近くに戻る→食べ物の報酬」というシークエンス、系統的脱感作のハンドリングエクササイズ、その上で、噛みつき抑制エクササイズとゲームを十分に行う。

問題が改善されるまで、食べ物を与えるのは手からのみ。報酬として使える食べ物を器から与えるような、もったいないことはしない。

レベル3:

飼い主があなた(トレーナー、行動コンサルタント)の指示に従えば、よくなる見込みはある。しかし、治療には時間がかかり、危険が伴う。噛みつき抑制エクササイズは必須。

レベル4:

その犬は、噛みつきの抑制が十分にできず、とても危険である。よくなる可能性は低い。激しく噛む大人の犬に噛みつきの抑制を教えようとすることは、危険であり困難である。また、飼い主が指示に完全に従ってくれることも非常に少ない。

飼い主が、犬のプロフェッショナルであったり、100%指示通りにすると誓っているなど、特別な事情にある場合にだけ、その犬に取り組むべき。

飼い主には、以下の内容をすべてを理解し、責任を取ること記載した用紙3枚に署名してもらう。

  1. その犬は、レベル4の噛みつきをする。再び噛みついた場合には、同等の被害を与える可能性がある。(ほぼ確実に起こると考えられる)。よって、家の中でのみ生活させ、大人の飼い主のみが接触できる。
  2. 子供や客が自宅を訪問するときは必ず、鍵のかかった部屋もしくは屋根付きの金網の囲いの中に犬を入れる。そこの鍵はチェーンに付け、大人の飼い主それぞれが首に下げておく。(子供や客が、犬のいる場所に立ち入らないようにするため)
  3. 犬を家の外に出せるのは、動物病院を訪れる時のみ。家を出る前にマズル(口輪)を付ける。
  4. 事故はすべて関係機関(動物管理局または警察)に報告される。

署名済みの用紙は、飼い主とその犬のかかりつけの獣医師にそれぞれ1枚ずつ渡し、残りの1枚はあなた(トレーナー、行動コンサルタント)が保管する。

レベル5およびレベル6

その犬は極めて危険で、破壊的である。人のそばに置くのは断じて安全ではない。私は安楽死を薦める。一生独房に監禁されて過ごすというのは、QOL(生活の質)が極めて低いからである。


犬の望ましくない行動は、放置しても改善されることはありません。また、罰を使うと行動が悪化したり、行動の原因がより複雑になるなどして、解決をさらに難しくします。自己解決しようとすることも、苦痛や威圧など罰でコントロールしようとするトレーニングもおすすめしません。

特に、犬の攻撃的な行動は、起きる前から起こさせないための知識を持ち、トレーニングをするのが最善ですが、小さなことでも起きたら放置せずに、報酬ベースのトレーニングを提供するトレーナーまたはインストラクターに相談することが大切です。

あなたの選択が愛犬の選択を左右しています。犬にそうした選択をさせてしまった環境や学習過程について知り、プロのアドバイスの下で再発や悪化を防止することにすぐに取り組みましょう。

Miki Saito, CPDT-KA

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